個人的には格安のテープLEDを使用していますが、格安といっても性能が劣るわけではなく、安価で使っていて大変重宝しています。
たまにはそのテープLEDに目を向けてみるとします。
現在、Amazonで売られている中国製のテープLEDですが、主に通常密度と勝手に呼んでいる3灯/5cmが主流です。
切断可能な電極の間隔が5cmごとで、この各区画の中に3個のLEDと抵抗1個で構成されています。切断できる区切りが5cmごとなので、5cm、10cm、15cmという長さに限られ、その途中で切るという選択肢がありません。
フリマ等で売られている鉄道模型用の自作室内灯も10cmものが大半を占めています。これだと長さがちょと足りない気味の車両が殆どですが、その話はまた。
色はというと、結構様々あるのですが、鉄道模型用としては、白色と電球色が主流です。
実はこの小さい抵抗に記載されている3ケタの数字は最初の二桁が有効で最後の一桁は10のべき乗数です。
一方で、間隔を狭めて2.5cm区間を一区切りとして、そこに3個のLEDを配置させている高密度のものも存在します。LED数はちょうど倍ですが、価格は倍というわけでもなく、7.5cmや12.5cmでも切断できるので、これはこれで重宝します。20m級の車両のNゲージサイズは1/150として、車両長13.3cmとなり、車両長としてはこの辺が一般的ではないでしょうか。
少し長めの鉄道模型には12.5cmがピッタリサイズです。
わたくしはこの高密度を好んで使っていますが、明るさが半端ないです。品評会・自慢会などでは顰蹙を買いそうな明るさです。
特に高密度の電球色は明るすぎて、全然ノスタルジックにはなりませんので、電球色がほしい場合には、短くても通常密度のものを使います。
ここで、テープLEDの各パーツの配置ですが、一体どうなってるんでしょうか、ということで、再び通常密度に戻って、ひっくり返して裏紙をはがしてみたのがこれです。
上の段にはLED側、下の段にはひっくり返した裏側を並べてみました。
ついでに、電流の流れる経路を赤い矢印で示しました。青線はGNDと呼ばれる「ー」極です。うっすらと見える導体の配置で電流が流れる経路が追っかけられます。
このテープLEDは通常密度の白色、抵抗値151Ωの5cm分の1区間最小単位ですが、他のバリエーションでも1区間の配置は同じです。
+12Vから入ってきた電流は、まっすぐ区間最後までいく一直線と分岐して、D1を通過し、その後、D2を通過した後、R1を通過してその後、D3を通過してGND(青線)に至ります。すなわち、1区画内では各パーツは直列接続となっています。1区画内の途中で切ると同じ区画内が全部消えるわけです。
テープLEDの両側面は+12VとGND(-)がずーっと最後まで繋がっており、次の区間にもその次の区間にも一斉に同時に流れるように、各区画がそれぞれ並列接続されています。
格安テープLEDの商品は原則5mロールになっていて、とても長いので一見、直列に見えますが、実は電極で区切られた区間ごとは全て並列で接続されています。
この1区間分の配線を先日のLTspiceで表現してみるとこうなります。
波線矢印ありの「D」は「LED」、「R」はおなじみ「抵抗」です。
上の写真の流れそのままです。
ちなみにここには出てきませんが、波線矢印なしの「D」はダイオードです。
で、鉄道模型でよく使う通常密度10cmのものなら2区画分が並列に接続されているので、模式回路は下のような図になります。
通常の5mロールの場合、この5cm回路が100個分、並列につながっているということです。直列ではないのですよ。
高密度だと、10cm分でも2.5cm単位が4つ分なので、下のようになります。
高密度と通常密度のテープLEDの抵抗のところを拡大したものが下図です。黒いパーツに「151」と数字が明記されています。
これはどちらも「151」と書かれています。(最後の1桁は10のべき乗なので、実際は150Ω)
それではホントに151Ω(150Ω)なのか、実際に抵抗値を測ってみましょう。
以下、通常密度の1区間分5cmを使っていきます。
このただでさえ小さい抵抗の両端子にワニグチを噛ませるのは至難の業ですが、なんとか噛ませて、テスターの抵抗測定レンジは200が適当です。抵抗を測ってみます。
測ってみたところ、「151.3Ω」でした。0.3Ωは商品のばらつきか、測定誤差かもしれません。いずれにしてもこのレベルだと表示に偽りはありません。
ということで、せっかく苦労してワニグチクリップを抵抗両端に噛ませたので、このまま、一旦テスター側のプラグを抜いて、レンジを直流電圧測定の「20」に合わせて、実際にテープLEDに12Vかけたときの抵抗両端の電位差(V)を測ってみます。
設定を変える場合には一旦、テスター側のプラグを抜いてやるといいです。上のような切り替え方式だと、OFFもしくは違うレンジに行くまでの間に、場合によりますが、支障のあるレンジも通過しなければなりません。プラグを抜くのが簡単です。
また、たまたま逆の極性になってしまいましたが、抵抗151.3ΩのテープLEDを12Vで点灯させたときの抵抗両端の電位差は「2.94V」です。符号はこの場合無視します。
抵抗両端にかかる電位差と抵抗値から、この抵抗を流れている電流が計算できます。
おなじみの
E=IR
から、I=E/Rです。
すなわち、
I=2.94(V)/151.3(Ω)=0.0194315(A)=19.4(mA)
と計算できます。
抵抗を流れる電流値はそのまま、回路を流れる電流値と同じことです。
では実際にこのときの回路全体に電流計を組み込んで、1区画分のテープLEDの回路を流れる電流を測ってみます。
・12V電源の+極をワニグチでテスターの赤棒に繋ぎます、
・テスターの黒棒先端をワニグチでテープLEDの+極に繋ぎます。
・テープLEDのー極をワニグチで電源のー極に繋いで、配線は終了、
・テスターのレンジは電流の「200m」に合わせます。まだ電源OFFの状態です。
電流測定は順番を間違えるとテスターを破損しますので、特にレンジスイッチ切り替えは電流を流していない状態で行うようにします。
・それだけ準備が揃ったら、電源ON!
おおおっ!
19.6mAですっ!すごい一致率!。
これで少なくともこの回路のような並列がない回路では、抵抗両端を流れる電流値も回路全体を流れる電流値も同じとわかります。
このテープLED1区間分にかかる電流は19.6mA、おおよそ20mAです。テープLEDの長さをいくつにして回路が複数並列になっても、1区間内の電流・電圧バランスは変わりません。
途中に使う抵抗値は、最大電圧12Vをかけた時に、LEDに流しても良い電流値(20~30mA付近が多い)となるように調整するために計算して決めています。位置は直流経路のどこでも構いません。逆に言うと、適切な抵抗を用いれば鉄道模型で3V用や5V用の電球やLEDでも使えるようになるわけです。明るすぎれば好みに応じて抵抗値を試行錯誤で増やすことになります。
消費電力はというと、回路全体では12Vの電圧がかかっているので、W=IEで、20/1000*12で、このテープLED1区画分の消費電力は0.24Wと計算できます。5mロールであれば100区画分なので、24Wです。
高密度でも1区間分(2.5cm分)では、抵抗が同じであれば、ついでにLEDも同じものであれば同じです。5mロールであれば200区画分なので、48Wとなります。
実際には同じ抵抗値でも結構電流値が異なっていたりするので、恐らくロットによってLEDの規格が有意にばらついていると想定されます。ここが格安たる所以です。
あるいは高密度では企業努力により効率のよいLEDを使用している可能性もあります。
上の手順で、「1区間内のテープLEDに流れる電流値は、抵抗両端にかかる電位差と抵抗値から計算」で出すことができます。テスターで直接電流を図るよりもはるかに安全です。
長物の場合は、区画単位の数だけ掛け算すれば、回路全体を流れる電流値が計算されます。ついでに電流値がわかれば最大の12Vをかけたときの消費電力も計算できます。
ここで、パワーパックとの兼ね合いを考えてみたいと思います。
原則的には、密度にかかわらず1区画に流れる電流が約20mAであれば、
鉄道模型で考えると、1車両あたりの電流は、
・通常密度10cmの場合、2区画分なので、40mA、
・高密度12.5cmの場合、5区画分なので、100mAとなります。
パワーパックには最大出力電流が明記されていますが、初心者用、入門編などは0.3A(300mA)だったりすると、上の規格の室内灯を使用すると、動かないT車だけの前提で、
・通常密度であれば、8両編成付近から、
・高密度であれば、わずか3両分程度で出力限界
という計算になります。
通常は動力車も最低1両は連結するはずですが、動力車は1両で最大出力時には300mAを超えたりするので、前照灯・尾灯などもあるとすぐにパワー不足となります。
古い電球タイプの前照灯・尾灯では電球1個の消費電流で20~30mA程度ありますが、新型のLEDタイプだともっとわずかです。実際に測ってみるのも面白いです。
なので、複数連結車両で動力車と室内灯を楽しみたい方は、パワーパックには1.5A以上のものを選ぶのが無難です。高密度テープLEDをご利用の方は特に要注意です。
パワーパックは複数線路に繋いでも大丈夫です。ちゃんと並列追加になります。ただ、隣り合わせよりは、ループの反対側など一番遠い位置に置いた方が効果的です。
意外な盲点になりがちですが、パワーパックに十分な出力があっても、AC/DCアダプターの最大出力で頭打ちとなるので、こちらも充分に注意が必要です。
つかない、動かない、の人は一度電源回りの容量を確認するのがいいと思います。
「室内灯の使用時点で、すでに「初心者」卒業」ということです。足りなそうであれば、あきらめて買い足して下さい。ライトを付けて走る列車は格別です。
ところで、
あるテープLEDには「2835」と書いてあった個体があったので(1番最初の写真の右端)、適当に既存のデータをいじくり回して名前を付けて、せっかくのLTspiceで回路図を作成してみました。
ついでにせっかくなので、抵抗両端を流れる電流値もシミュレーションしてみました。
下に抵抗R1の部分を流れる電流をシミュレーションしたグラフを示します。
ためしに、他のパーツ、例えばダイオードの部分を指定しても全くグラフが重なります。これは、全体を通して、電流値が一定であるからです。上の回路のように複数の並列回路がなければ、電流計はどこに設置しても同じ電流値を示すということです。
LTspiceのダイオードリストにあるLEDの数値をいじくり回して、かなり近いところまでいったのですが、これ以上は変数をいくらいじっても実際に近づかず、現状ではこれが限界です。最大値だけで見るとそこそこいい感じもしますが、もっと低い電圧(1-2V付近)から点灯が始まっていたので、グラフの立ち上がりもかなり遅いようです。
抵抗と直流電源は妙な挙動は示さないので、この電流値の違いはLEDの規格値のみによるものです。(その後、どうも電源側にも要因がありそうだということがわかりました。)
電気屋さんではないので、LTspiceが抱えているダイオードリストのどの名称が今現在相手にしているものなのか、殆どというか、全くわかりません。実測値に合うように試行錯誤のみです。
LTspiceは数ある回路シミュレーターの中では一番初心者向けとされているので、暇で電気にちょっとでも興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。